色紙集(一) 夕 焼 離 念
昔私、古里で夕空を愛し夕べごと根山に立って夕空を眺めました。雨や雪のふっているのでないかぎり私はどんな曇った夕べも根山に立って夕空を眺めました。
しかしいかに美しくとも日が暮れて暗くなると夕空は消えてなくなりました。若し夕空にいつまでも夕空でいられたら、私夕焼に気ちがいにされてしまふような気がしました。夕焼いかに美しくとも日が暮れてしまえば消えてなくなる、うれしいことだ。
私は日もすっかり暮れ夕空もすっすり消えてしまってから、ひとり安心して根山を下りるのでありました。
或る夕べ私はついに夕焼から万象離念のヒントを得ました。
夕焼は夕焼けを知らず然はあれども夕焼けなり
夕焼かくの如んば万象は皆離念なりと
横山祖道 (掛物より)
風雅天壌無窮 |
夕焼は夕焼を知らず |
万象一如夕焼 |
無所得無所悟 |
作曲下書き |
作曲下書き |