遺影集 草笛四摂法(その二)
「愛語よく回天の力あることを学すべきなり」って、それは正法眼蔵の菩提薩●(ぼだいさった)四摂法という巻に書かれているんですが、第一に「布施」、次に「愛語」、それから「利行」――人のためになる行いですね、そして「同時」――その人と一体になるということです。
その四つがあるんですがね、私が草笛を吹くとき、この四摂法をうんと勉強したんですよ、正法眼蔵のね。で、草笛ひとつでね、その四摂法にね、ちゃんとマッチするようにしたんですよ。
だから草笛の音が「愛語」なんでね。なんとなく物悲しいとこね、しんみりとするんですよ、人はね。しんみりすると、ふっと世の中忘れるんですよ。世の中忘れるも、自分を忘れるも、同じことなんですよ。そうするとね、天然にほっとするんですよ。
本当は誰でも暖かい心を持って、ほんのりした心を誰でも持ってんですよ、草笛でほっとすると、ブスッとしていらいらしてっていう、そういう心があらわれないんだね、表面にね。
だから草笛つて、ひとつの「愛語」なんだね。それはね、やっぱりその仏道的にいえば、大慈大悲っていうんだけどね。大慈大悲って、これは観世音菩薩の大慈大悲ってね、ま、偉大な情だね。そういうのが、ほれ、草笛ひとつでね、それができるんですよ。だからあの、いろんな説法なんかするよりはね、草笛吹くほうがよほどいいなって。
横山祖道談「草枕しばし慰む」より抜粋 聞き手・渡辺誠弥(「奈良・飛鳥藍染織館」館長*)
*草笛についての老師の思いは『草笛禅師〜横山祖道
人と作品』(こちら)のP56〜66を参照ください。